猫のいる店

shimizu_h2005-09-19

 近所にペット用品の店がある。元は酒屋だったのが、1、2年前に改装して今の店になった。改装したといっても外観や中の作りはほとんど変わっていない。外の看板の隣にはドラム缶くらいのビールの模型がくっついたままで、柄だけがビールから猫のシルエットになった。


 店の中にはたいてい猫が数匹いる。今はチンチラの雑種のような長毛が一匹と、白とグレーのトラ柄をした雌の日本猫が一匹よくいる。店の人とは何度か話したことがあるが、どれも捨てられていたのを保護したものなのだそうだ。店主のおじさんは家にはもっといると話していた。店の外には里親募集のちらしが幾つも貼ってある。


 日本猫の方は名前を千夏といって、夏に拾ったから千夏なのだそうだ。猫にしては立派な名前だ。僕にはそういう名前の知り合いはいないけど、もしいたとしたらその子も多分、夏に生まれたからなのだろう。


 その猫を最初に見たのは数カ月前だったけど、その時はまだ人を怖がっていて、僕が触ると体をぐっと硬くして緊張するのが分かった。おじさんは「多分飼い主に虐待されていたんだろう。もう少ししたら人に慣れてくるんだがね」と言っていた。


 一昨日、店のダンボールの上にいるその猫を見つけて久しぶりに撫でてやると、随分人に慣れたのが分かった。所々にまだ少しぎこちない仕草はあるけれど、もう人を怖がっている風ではなかった。僕が携帯で写真を撮っていると、退屈そうな目をこちらに向けていた。